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寂しい、哀しい。ときにはそれらが心を洗う。映画『岸辺のふたり』。

Text & Illustration by Yoshimi Yoshimoto (Design Studio Paperweight)

2015.07.10

 8分間に渡る永遠の切ない哀しみが、このアニメーションには込められている。世界各地での公開を経て現在HDリマスター版が発売されている。

 2001年度のアメリカ及びイギリスで短編アニメーション部門において、アカデミー賞を受賞した(その他アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ&観客賞受賞、2002年広島アニメーションフェスティバル グランプリ&観客賞受賞など受賞歴多数)佳作だ。

 最初のDVDリリースではマイケル・ドュドック・ドゥ・ヴイット監督の経歴等(ジュネーブのthe Ecole Supérieure des Beaux Arts Genève 、イギリスのthe University College for the Creative Arts in Farnhamを経て、1978年、イギリスのウエストスーリ・カレッジ・オブ・アート卒業)がサラッと記述されている程度で、ブックレットの内田也々子の訳文に重きが置かれていたような気がするが、今回のリマスター版では、監督のこれまでの殆どの作品『岸辺のふたり』(2000年/8分)『アロマ・オブ・ティー』(2006年/3分)『お坊さんと魚』(1994年/6分20秒)『掃除屋トム』(1992年/2分30秒)『インタビュー』(1978年/8分)『CM集(7作品)』(1984‐2007年/総計約4分)も同時収録、特典として監督インタビューも収録した決定版だ。

 2003年6月に旧版のDVD発売後、ぼくも大きなスクリーンで再び観たくなり、35mmプリントで上映される映画館に行ったが、更にその構図構成の見事さに唸らされた。僅か8分間の上映時間の短い映画が、例え短期間であっても繰り返し映画館でロードショーされるといった事態は、世界中でも珍しい出来事だったそうだ。日本からのこの信じられない劇場公開のニュースに、マイケル・ドュドック・ドゥ・ヴイット監督自身も驚いた。そして2008年の12月に新宿武蔵野館で1年間の公開も実現しているし、2015年の今でも、世界の様々な場所で小さな上映会が行われている。

 デザイン、ストーリー、そして監督と三役を務めたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットは、オランダ生まれの世界的な評価を受ける映像作家だ。『岸辺のふたり』では、最新のデジタルセルアニメーション制作システム「ANIMO」を使い、極めてシンプルながらも深い味わいのある絵づくりに成功している。

 台詞が無い分余韻が深い。アコーディオンとピアノによる背景音楽によって、その絵はますます雄弁に喪失感を語りかけて来る。音楽監督は、『老人と海』『木を植えた男』等の名作を手掛けたノルマン・ロジェと、『大いなる河の流れ』のドゥニ・シャルラン。彼等が選んだ曲は、日本でも愛されている「ドナウ川のさざ波」だ。哀愁を帯びた旋律がたまらない。

画像クレジット
出典: kishibeno.exblog.jp

『岸辺のふたり』公式サイト

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