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「サマー・オブ・ラブ」の時代が生み出した名盤の制作秘話。

Editing by Design Studio Paperweight INC

2019.09.12

ビートルズの最高傑作といわれている「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のレコーディングの苦労話を、彼らと関係の深かったジョージ・マーティンが語る。ビートルズファンならば読むべき1冊。

ロックやポピュラー・ミュージックファンは「1960年代の終焉」を特別な親愛の情を込めて、サマー・オブ・ラブ (Summer of Love)と呼ぶ。主には黒人達の公民権運動、ベトナム戦争に対する反戦運動や"ラブ&ピース"を掲げたヒッピームーブメントが中心となった事象だと伝えられるが、古い伝統や既成の価値観に反抗したカウンター・カルチャー、ドラッグカルチャー、サイケデリック・ロック、フェスティヴァル、ニューシネマ、そして1967年の6月16日~18日に行なわれた『モンタレーポップフェスティヴァル』、1968年10月6日の『ヒッピーの死』というイベントまでの出来事を含むらしい。

この本の原題も『Summer of Love』だ。ビートルズを間近で見続けサポートし続けたジョージ・マーティンが、アルバム『サージェント・ペパー』製作前後の日々を題材にして、1966年を振り返ったものだが、水木まりの訳文の巧さも手伝ってか、彼の強い思いが伝わって来る。記憶が曖昧だと遠慮がちに序文で告白しているが、とんでもない。創造的な課程が繊細に、克明に綴られていて、 黄金に輝く素敵な日々、激しく熱い愛の夏に何が起こったのかが、優しくてユーモアたっぷりの口調で語られてゆく…。

マスメディアの記事をベースにまとめられたビートルズの研究本や、音楽ライターやビートルマニアが書くビートルズ本は、とにかくゴシップ色が強く、楽曲解説にしたところで他人が何様のつもりだと感じさせるような内容が多く、やたらとポール・マッカートニーとジョン・レノンの対立を煽るようなシニカルなものが非常に多い。もちろん片岡義男が訳したジョン・レノンのインタビュー本等は素晴らしい内容だとは思うが、それでもレノンの苛立ちに対し、不愉快な気分になる事もある。

ジョージ・マーティンによる『サージェント・ペパー』収録楽曲の解説や、当時の状況を振り返る記述は、時に音楽用語や専門家的な目線が入るが、特に際立った難解さは無い。どちらかと言えば分かり易い。『サージェント・ペパー』やシングルの"ストロベリー・フィールズ・フォーエバー"”ペニー・レイン”を聴きながら読むと、更に臨場感が溢れ、あの夏を経験した事が無い者でも不思議な感覚に囚われる。事実、ぼくは1966年の様子が目に浮かんで来たし、アビー・ロード・スタジオの空気に包まれたような気がする。この間DVD化された映画『パイレーツ・ロック』を観て、前述した読書を繰り返すと、サマー・オブ・ラブに触れる事が出来るとも思う。

現在、サマー・オブ・ラブの夢は幻想として打ち砕かれ、巨大な資本産業にロックが飲み込まれて久しい。音楽マーケットのグローバルな拡大や、インターネット等メディアの多様化や進歩から、世界中のインディペンデントの音源や情報を手に入れる事が出来てしまう。ミュージシャンは薄っぺらいヒット曲を作って生き残るか、淘汰されて消えるかのどちらかだ。昨年のビートルズブームの再燃等も音楽ビジネスが仕掛けたものだ。

しかし商売として山程出版されたどのビートルズ本に比べて、この既に絶版となった『メイキング・オブ・サージェント・ペパー』は別次元にある。ファブ・フォーの輝きがよく伝わって来ると同時に、当時の音楽シーンの息吹が聞こえて来る。ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクス、プロコルハルム、ジミ・ヘンドリックス、グレイトフル・デッド、ジャニス・ジョプリン…、様々な文化を若者が中心になって生んだ時代の自由さや、精神の健全ささえ感じられるのだ。

 

ビートルズを知る、オススメの1冊。

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