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言葉や世代を超え、世界中で愛される絵本作家ディック・ブルーナとミッフィー。

Editing by Design Studio Paperweight INC

2021.08.10

Black Bearシリーズをはじめとする装丁やポスターデザイン、広告ポスターやパッケージデザイン、ロゴデザイン、キャラクターデザイン等で世界的に知られるディック・ブルーナがデザインし、文章を考えた絵本を、わたしは大変に好いています。

ブルーナは出版社「A・W・ブルーナ&ズーン」を経営する父アルバートと母ヨハナのもとに第二子として誕生、様々な芸術の影響を受けて成長し、後継者やビジネスマンの道を歩まずアーティストとなり、父親の会社で専属デザイナーとして腕を奮いました。

1953年にブルーナはイレーネ・デ・ヨングと結婚、その後3人の子供に恵まれます。幸福な家庭を築き始めた同年、初の絵本『りんごちゃん』を刊行。海でのヴァカンス中に、息子のウサギのぬいぐるみからヒントを得て、幼い息子のために『ちいさなうさこちゃん』というウサギを主人公とした字のない絵本を創作しました。

『りんごちゃん』、そして『ちいさなうさこちゃん』も発表まもなく好評を博し、特に『ちいさなうさこちゃん』はミッフィーシリーズとして爆発的な人気を得、全世界中で愛され続け、現在シリーズが約100冊出版されています。売り上げ総数は9千万部以上、世界で最も有名の人気絵本でしょう。

無駄な装飾を省いて、ごく少数のカラーを用い、最小限の線やシンプルな曲線で描かれる、その世界には、ブルーナならではのこだわりとセンスが、子供向けとはいえ、ふんだんに注ぎ込まれています。年齢や人種の壁を越えて、愛される理由のひとつに『ピクトグラム(絵ことば)』としての機能もあるからでしょう。『ピクトグラム(絵ことば)』は、デザインの基本でもあるのです(街によくある交通標識等を思い浮かべてみてください)。

親しみ易さと簡潔さが同居出来る不思議さも、ブルーナの絵本の特徴と言えます。そして画家を目指していたブルーナの豊富な美術体験も大いに反映されています。彼の生まれたオランダで起こった『デ・スティル』運動のようなスタイルや、フェルナン・レジェの抽象絵画作品にも通じる「RED、BLUE、GREEN、YELLOW、GRAY」等の独特の色合いは、彼独自の『ブルーナカラー』として、印刷マニュアルにもあるそうです。

デザインも素晴らしいのですが、擬人化された子ウサギの日常を描写したお話が、淡々として実に良いのです。ブルーナはその主人公に、ウサギを意味するオランダ語に小さく愛らしいものという意味合いを足して、ナインチェ・ブラウスという名前を与えました(ミッフィーは英語名)。

「小さな愛らしいもの」への温かなブルーナの視線は、幅広い社会福祉活動にも向けられ、小児科病棟の壁画、赤十字の献血運動、身体障害児のための募金用絵葉書、「小児血友病の本」の制作への参加等も行っています。

洗練されたグラフィック・デザインと簡潔な文章だけでは、絵本の、キャラクターの魅力は出ない、と思います。ブルーナが亡くなった後にも世界中で読者が増え続ける理由に子どもへのひたむきな愛情があり、そのデザインに託された人々への思いが、絵本が初めて発表された年から60年以上経った今でも、わたしの心を楽しくさせてくれるです。

 

ディック・ブルーナを知る4冊

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